一週間の終わりに、川へ逃げ込む

平日の昼間、蛍光灯の下でパソコンと睨み合っていると、ふと思うことがあります。「ああ、釣りに行きたい」と。
デスクに積まれた書類も、終わらないメールの返信も、いったん全部置いて、夜の川辺にしゃがみ込みたくなる。そんな衝動に素直に従って、仕事を終えたその足で川へ向かいました。
ターゲットはもちろんウナギ!この前、極秘のドバミミズポイントで大量にゲットしてあるからです。

天然国産の激旨ウナギを食べたい…
そう思いながら釣り場へGO!走り出してすぐ、風が若干強めになってきました。けれど、念のため積んでおいたウィンドブレーカーがあります。羽織ると、それだけで「持ってきてよかった」という小さな安心感に包まれました。たったこれだけのことなのに、もう癒しは始まっているのです。
向かったのは、川幅の狭い河川。世間でいう”映える”釣り場ではありません。むしろ地味です。けれど、ここがいい。ここには、僕を急かすものが何ひとつないのです。
荷物運びも、ここなら苦になりません

ありがたいことに、この釣り場は駐車場から釣り場まで50mほど。竿、リール、エサ、バケツ、三脚竿受け、折りたたみ椅子……と、荷物はなかなかの量で、結局2往復することになりましたが、この近さならそれほど苦になりません。むしろ、デスクワークで凝り固まった体には、軽い運動がてらちょうどいいくらいです。釣り場までの距離が近いというのは、それだけで通いたくなる大きな魅力なのです。
ここで地味に効いてくるのが、虫よけスプレーです。釣り場に着いたら、まず全身にシュッとひと吹き。おかげで今夜は蚊にまったく悩まされませんでした。夏の夜釣りで、せっかくの集中を蚊に削がれるのは本当に興ざめです。小さな準備が、夜の快適さを大きく左右します。
そして、いよいよ竿のセッティング。僕のウナギ釣りは、3本体制が基本です。
「3本出しておけば、どこかで当たる」という安心感
なぜ3本か。理由はシンプルで、「3本出しておけば、どこかで当たるだろう」という安心感がほしいからです。
ポイントを少しずつ散らし、針の大きさもそれぞれ変えておきます。針のサイズは、その日バケツの中にいるミミズの大きさで決めます。大きいミミズが多い日は大きめの針、小ぶりが多ければ小さめの針。「どれぐらいの大きさのミミズが、何割を占めるか」――その比率を見ながら針を選びます。これが、けっこう当たるのです。

ここの場所は特に、2.4mの竿がちょうどいい。川幅が狭いぶん、長竿はむしろ扱いづらいのです。短めの竿で手返しよく、ポイントにそっとエサを落とす。道具が場所にぴたりとハマったときの、あの”しっくり感”がたまりません。
ちなみに、ミミズが大量に採れた日には、いずれ4本体制も試してみたいと密かに目論んでいます。竿が増えればアタリも増え、あっちこっちと見回るぶん疲れはするでしょう。けれど、その分わくわく感も倍増するはず。考えてみれば、この「次はどの竿に来るだろう」という高揚感こそ、なんだかんだで精神衛生上とてもいいのです。
ただし注意点もひとつ。3本でもちょこまか動き回ることになるので、手持ち無沙汰の口寂しさは夜釣りの密かな敵です。「スナック菓子でも持ってくればよかった」と毎回思う。次回への、ささやかな反省点ですね。
闇の中、光るのは竿先だけ

セッティングが終われば、あとは待つだけ。
周りは、真っ暗です。視界に残るのは、ケミホタルで淡く光る竿先だけ。その小さな光を3つ、じっと見つめます。
「いつ当たる? まだか? そろそろか?」
この、いつアタリが来るか分からないドキドキ感こそが、ウナギ釣りのだいご味だと思います。スマホの通知も、上司の小言も、ここには届きません。あるのは、川の流れる音と、自分の鼓動と、3つの光だけ。
不思議なもので、この”何もしていない時間”が、いちばん頭を空っぽにしてくれます。仕事では「常に何かを生み出せ」と急かされるのに、ここでは「ただ待つ」ことが正解なのです。この価値観の逆転が、なんとも心地いい。
そして、その瞬間は来た
竿先が、グッと持っていかれました。
合わせて、巻く。重い。明らかに、重い。心臓が跳ねます。久しぶりの、この感触――。
上がってきたのは、70cmの極太ウナギ。久々のサイズに、アドレナリンが沸きまくりました。さっきまでの眠気も、一週間分の疲れも、どこかへ吹き飛んでいました。ライトに照らされて鈍く光る、丸々と太った魚体。これです。これを味わいに、僕は川へ来るのです。

その後も、ぽつぽつと魚が顔を出してくれました。今夜の釣果をまとめると、こんな具合です。



| 魚種 | サイズ | 釣果 |
|---|---|---|
| ウナギ(本命) | 70cm(極太) | 1匹 |
| アメリカナマズ(アメナマ) | 40cm | 1匹 |
| ニゴイ | 20cm | 2匹 |
| メソ(小ウナギ) | ― | 3匹 |
本命以外のゲストもにぎやかで、最後まで竿先から目が離せませんでした。メソのアタリが3回もあったのは、この川にちゃんとウナギが居着いている証拠でもあります。
名残惜しいけれど、撤収
もう少し居たかった。本音を言えば、夜が明けるまで竿を出していたかったのです。
けれど、明日は仕事。そして何より、お腹が空きすぎました。後ろ髪を引かれながらも、潔く撤収を決めます。”引き際”を知っているのも、中年の嗜みということにしておきましょう。
また2往復して荷物を車に積み込み、帰路につきます。時刻は遅いですが、深夜の道はガラガラに空いていて、運転はじつに楽ちんです。渋滞にイライラさせられることもなく、極太ウナギの余韻に浸りながら、鼻歌まじりにハンドルを握ります。この帰り道もまた、悪くありません。
翌日の食卓、一口サイズの最高のごほうび
さて、持ち帰った極太ウナギ。70cmとはいえ、たった1本です。家族みんなで分ければ、一人あたりはほんの一口サイズに収まってしまいます。
けれど、それでいいのです。国産・天然物のウナギの、あの口の中でとろけるような食感は、何ものにも代えがたい格別なもの。たった一口でも、家族が「うまい!」と目を輝かせてくれます。その姿を眺めているのが、これまた、たまらなく幸せなのです。
自分で釣って、自分で持ち帰った魚を、家族が喜んで食べてくれる。考えてみれば、これほど精神衛生上いいことはありません。竿先の光を見つめるドキドキも、食卓に広がる笑顔も、ぜんぶひっくるめて、僕にとっての”癒し”なのだと思います。
ウナギ釣りは、コスパ最強の癒しです
最後に、これから始めたい同志へ、少しだけ。
ウナギ釣りの何がいいって、格安タックルで高級魚が釣れる、その圧倒的なコストパフォーマンスです。参考までに、僕の装備はこんな感じです。

| 道具 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ロッド | 1,000円台の格安ロッド | この川幅なら2.4mがちょうどいい |
| リール | シマノ/ダイワのエントリーモデル | セール時に買ってコストを圧縮 |
| ライン | ナイロン | 安価で扱いやすい |
| 針 | ミミズの大きさで変える | バケツ内のミミズの比率で選ぶ |
| 本数 | 3本体制(いずれ4本も) | 「どこかで当たる」安心感 |
これで70cmのウナギが釣れるのですから、こんなにお財布に優しい趣味もそうそうありません。高価な道具はいりません。あとは、「ウナギが釣れる環境」を自分で整えていくだけです。

その他の必要な道具はこちらから。
僕が経験で掴んだ、釣れやすい条件はこのあたりです。
| 条件 | 釣れやすさ | ひとこと |
|---|---|---|
| 雨の日の後 | ◎ | 増水・濁りでウナギが動く |
| 夜間 | ◎ | 夜行性なので断然有利 |
| 干潮 | ✕(避ける) | 水位が下がると食いが渋る |
道具にお金をかけるのではなく、足で稼ぐ。エサのドバミミズが採れる場所を探し、ウナギの潜むポイントを開拓していく。その地道なプロセスそのものが、また面白いのです。
疲れた夜に、1,000円台の竿を持って、真っ暗な川へ。光る竿先を見つめながら、ただ「当たり」を待つ。そして翌日、その一口を家族が喜んでくれる。それだけで、明日もまた頑張れる気がするから不思議です。
さあ、次はどこのポイントを開拓しましょうか。

